忍び逢い~3~
会って、お話をして、そして、、、
膝枕を貸し合う、、、
、、、貸し合う、というのも妙な表現だが要するに互いに一時の精神的な温もりを求めて、ということなんだろうか
このところ仕事に追われ、息をつく暇もないマサハルにとって、つかの間の現実逃避
何もかも忘れて誰かに身を委ねたい
かつてならば欲望のまま貪るように求めあう、そんな時間を欲したこともあったが、今はそこまでは求めていなかった
それは亜美の方もそうだろう
現に亜美が提案してきたのはビジネスホテルでの逢瀬
平日の昼間、文字通り「休憩」するだけの目的でホテルに入るというプラン
それを聞いたマサハルは同意しつつもやはり現実逃避という意味では少しくらい背徳的な会い方でも良いのではと内心思った
チェックインでのわずらわしさもあったが、久しぶりにラブホテルというあの淫靡な空間に行ってみたかったというのもある
下心がゼロだったというわけではない
何しろオトナの男と女である
二人っきりの誰も知らない空間、そして時間を共有する
本来なら話して盛り上がってそれでバイバイでも構わない
が魅力的な彼女を前に果たしてどこまで自制できるのか、、、
とはいえコロナ禍であり、どの瞬間でマスクを外すのか、それとも外さないのか
という問題もある
が、それでも雰囲気によってはもしかしてハグくらいはしてもいいかと思う可能性だってある
、、、かもしれない
そうなったら軽いキス、、、とか
(ああ、いかんいかん!)
またも妄想がマサハルの脳内を駆けめぐる
とりあえず落ち合う場所だ
インターチェンジからほど近いショッピングセンターは決まった
だったらそこからそれほど遠くない場所がいいだろう
何しろ時間はあるようで限られている
、、、と目に留まったのがすぐ近くにあるファッションホテル
(そういえばこんな所にあったな)
ネットで調べるとビジネスプランもあるようだ
(これならそんなに下心ありありには見えないだろう、、、って隠しているわけじゃないが)
そんな事を思いながらポチっと予約を入れてみた
(よしっと、、、)
亜美の方も最初こそ、話すだけならそういうホテルじゃなくとも、という思いがあったようだがゆったりとくつろげるなら、という事で承認してくれた
会うという日程が決まると何だかソワソワするというかワクワクするというか
それでもやっぱり初めて会うのだから緊張はする
(って今から緊張してどうすんだよ!)
はやる心を抑えきれないマサハル
がしかし
前日になって思わぬ事態が待っていた、、、
猫というものはある日突然、様子がおかしくなる、というのがよくある話だ
マサハルの愛猫も例外なく
前々日の夜、ひどい下痢をした愛猫の様子をみてただ事ではないと感じたマサハル
朝になってペット病院へ連れて行くがしばらく様子見が必要だという
点滴を打ってもらい下痢止めをしたのだが家で様子見する者も他におらず、このまま置いていくわけにはいかない
(今ならまだ間に合う、、、かもしれない)
予約を入れたホテルをキャンセルし、散々悩んだ挙句、亜美に連絡を入れ謝罪する
苦渋の決断ではあったがやむを得ない
がそれ以上に残念でならなかったのは会える事がそれほど楽しみだったからだ
断りを入れたのち、自分自身でも思った以上に落ち込むのを感じるマサハル
(きっともう、、、会ってくれないだろうな、、、、)
ある種の絶望感、今更ながら「遠くまで会いに行く」ことの難しさを痛感し、さらに落ち込んだ気分になる
今までならばあり得ないことだが、その勢いはマサハルを別の行動に駆り立ててしまった
(つづく)