忍び逢い~9~
マサハルの書いた小説のタイトルを見た瞬間、気のせいか鼓動が早くなるのを感じる亜美
『忍び逢い』
と書かれたタイトルはつまり、、、この先の二人の逢瀬を明らかに予感するものであった
(これはもしや、、、)
自分とマサハルが?
確かに以前、会おうとした二人であったがその時は何気ない興味からきたもの
忍び逢う、というほどの背徳感はなかったのだが今は何となく違う
そんな亜美の心を見透かしたのかそれともいつものようにマサハルの妄想なのか
そんな事を思いながら読み進める亜美
主人公はマサハル、そしてもう一人の名は亜美
(えっ、、、そのまま?)
現実と想像を隔てている垣根が揺らぐのを感じる
(そうだよね、、、私との事を書いて、と頼んだんだから)
ともあれ、架空の名前で書くものだと思っていたので思わぬ展開に胸の鼓動が高まる
二人のやりとり、そして前に会おうとした件、、、ほとんどが実際にあった事である
同時進行ではないものの、すぐ目の前で起こっているようなそんな錯覚、、、
亜美の中で何かが大きく揺らぐのを感じる
(早く、、、次を読ませて、、、)
亜美の期待に応えるかのように小説はトントン拍子で書き進んでいく
更新されるごとに小説の世界にのめりこむように夢中で読み進む亜美
(会いたい、、、会ってみたい、、、)
会いたいのが果たして書き手のマサハルなのかそれとも小説の主人公であるマサハルなのか
いや、どちらでもいい
亜美の中で会いたいという気持ちが以前とは違うカタチで膨らんでいく
そうしたある日
マサハルとのやり取りの中でお互いの思いが一致したかのようにどちらからともなく提案があった
「会いませんか」
急展開ではあるが二人の気持ちはもう抑えられなくなっていた
(つづく)