マサハレル也のハレルヤ日記

趣味で小説のようなものを書いてます

忍び逢い~8~

『忍び逢い』

昭和レトロ的なタイトル

そこに秘めた想いは亜美との逢瀬、、、

勿論、現実に起きたことではないがあの時、会っていたら、という想像

、、、いや、妄想から初めてみようと思ったのは自然な流れだったのかもしれない

とはいえ

まだ見ぬ相手であり、これまでのように逢って、交じり合い、求めあって、そして、、、という実体験

すべてがリアルに再現したわけではなく中には多少盛った部分もあったが、それらはほぼ実体験から書いたもの

「会ってみてもいい」

というところでは一致していた、とは思うものの相手は彼氏持ち(既婚者ではあるがそれは別の話)

今までのように想い合い、その流れで「会いたい」という気持ちが一致しての逢瀬

という流れではない相手との話

(さて、、、どう展開していけばいいのやら)

というところが悩ましい部分であったのも事実

亜美はどう思っていたかわからないがマサハル自身は相手への興味だけでなく彼女が書き綴ってきた日記を読んで
その健康的かつ能動的なエロチシズム溢れる女性として抱いてきたイメージ

それが実際の彼女に会って果たしてどうなのか、、、という部分

そのギャップ的なものや、会った時の反応、自分自身の反応もだが、それらも含めて「会ってみたい」という思いがあった

その想い、そして今までの個人的なやりとり、それと何よりも刺激的な写真の数々、、、

(これだけあればとりあえずは始められるかな)

久しぶりにパソコンのキーを打つ指先に力が入る

(それにしても、、、?)

それにしても、だ

何故、彼女は急にあんな写真を見せようとしたのだろうか、、、?


ふいにマサハルの脳裏にそんな疑問が生じた

普通だったら異性のどうでもいい相手にあのような露わな姿の写真を見せようなどと思わないはず、、、なのに

(誘っている、、、?、、、わけじゃないか、そんなはずはない、よな、、、)

何しろ以前、会おうとした際には最初、ビジネスホテルでの落ち合う事を提案されたくらいだ

「会って話をして膝枕するだけならそれでも良いのでは?」

そう提案された際にはぐうの音も出なかったが、そういう空間は逆に落ち着かないというか下心云々はさておきラブホテルという空間の方が出入りが楽な気がしたのも確か

最終的には彼女もOKしたのだが結果的に会えなかったのだからその時の彼女の本心はわからず仕舞い


とはいえ彼氏との一途な関係性も理解している

だから彼女の本心が余計にわからず混乱してしまうのだった


(いや、とりあえずは書くことだ)

艶やかな視線で誘う亜美の写真を脳裏から必死で払拭し

パソコンのキーを打ち始めるマサハルであった

 


(つづく)

 

 

 

忍び逢い~7~

亜美があの写真を見せようとしたのは気まぐれではない

自身の露わな姿を、、、最近は彼氏にしか見せた事のない艶めかしい表情も含めて、誰であれ簡単に見せるつもりはなかった

それがどうしてだろうか、、、マサハルに対しては何故か見せてもいいと思えたのである

彼氏との関係が終わったわけではない

だが、やりとりを交わし、色んな事を吐き出すうちにいつの間にか、それ以上の何か

、、、何かが何であるかはわからない、が、どこか心を許してしまいそうなマサハルの存在は彼氏とはまた違う

それこそ膝枕のように身を委ねてしまいそうなそんな気がしたのかもしれない

と同時に

自分自身の事をもっと知ってほしい、という気持ちも生じていたのかもしれない

それはもしかしたら

彼氏との最近のことも影響しているのだろうか

例の事実婚の女性の存在

それに加えて嫉妬深い彼氏によるある種の行動制限

会っている時もアクシデント的な事で時短があったり、時にすれ違いのような事も続き

今までなら身も心も満たされていたはずの彼氏との逢瀬も今は何か物足りない

勿論、会えばそれなりに燃え、いつも通り求めあい、自分の身体の隅々まで知り尽くした相手だからこそ、というのは変わりない

でもこのままでいいのか、、、という思いは常にあった

というかどうしても脳裏から払拭できない同棲中の相手の存在、、、

既婚者で家庭もある自身の立場で言えることではないがそれでも

好きだった相手だからこそ、信頼していた相手だからこそ、今まではすべてを委ねられたはず、、、なのに


そんな時にふいに現れたマサハルという存在


年齢的にも恋愛対象外ではあるし、好みのタイプかどうかもわからないし、それ以上に遠距離住まいである


そういう関係に至ることはないと理解する一方で今まで自分の上を通り越して来た誰とも違う不思議な存在、、、

彼が書き紡ぐ小説を読み、その世界に浸ってみたい、その世界に自分も誘って欲しい

そんな幻想、、、というか妄想を抱いてみたのも事実

だがそれ以上に、ヴァーチャルなやりとりだけで物足りない

リアルなマサハルを知りたい

と同時に私自身も知ってほしい


そんな思いが生まれ始めたのだろうか


それが、、、あの写真を見せるきっかけになったのかもしれない


(でもちょっとさらけ出し過ぎたかな、、、)


アルバムを消そうと思ったそんなある日


マサハルの日記がアップされていることに気付き思わず目を通すと、、、それは、、、!


名前こそ違う風に書かれていたものの紛れもなくそれは亜美との事を書いた日記だった

 


(つづく)

 

 

 

 

 

忍び逢い~6~

いつものように亜美とのやりとりをしようとコミュニティサイトを開くマサハル

と、何気ないメッセージの後に続くように、フォトファイルの暗号パスが記されていた

(フォト?、、、確か前に見たのはもう無かったような、、、)

もうひとつのコミュニティサイトでたまに気まぐれでセクシーな写真をアップする事があった亜美
グラマラスな胸元をチラッと写すようなショットなど、ギリギリの線で程よいエロチシズムを感じさせるものも多かったが
気がつくと写真だけ消えていることも稀ではなく
見逃した時などは大いに後悔したものだった

そんな時にそっと見せてくれたのがこのサイトのフォトファイル

自分にだけ、、、ではないのだが何だか秘密を覗き見しているような愉しみもあり
それほど露出が多くなくともラッキーだと感じたものだ

そういえば最初に会いましょうと決めた頃に初めて彼女の素顔、、、素顔といってもすっぴんという意味ではなく
今までベールに包まれていたお顔の写真を見た時には、心臓がバクバクするのを感じたものだ

吸い込まれそうなほどキュートでクリっとした瞳、、、
情に厚そうで顔を寄せたらキスしてしまいそうなほど肉感的な唇、、、

彼氏に向けた笑顔だったのだろうか
こちらに投げ返る笑みを見ているととてつもなく抱きしめたくなりそうな衝動を抑えきれない
(勿論、近くに居ないので抱きしめる事は出来ないが)

グラマラスな印象が先行しがちな亜美であったがマサハルにとってそれは大事な部分ではなかった

何よりも顔が好みだったのである

それが、、、より会ってみたいと思う引き金になったのは否めない
会ってみたところで何が起きるとかいうわけじゃなくとも、だ

そんな亜美のフォトファイルはその写真以降、何もなかったはず、、、なのに?

暗号パスを聞いたマサハルは色めき立つのをこらえながら仕事中にも関わらずファイルをクリックした
するとそこに、、、


心臓の高鳴りとともに思わず周りに人が居ないか確認する

(こ、これは、、、)

最初に現れたのは寝ころびながら微笑む亜美の写真

彼氏に撮ってもらったのだろうか、裸同然、、、いや、これは裸に違いないと思しきもの
胸を寄せグラマーさが際立っているが何よりその瞳にまたもやられそうになる

(まだ、、、ある?のか)

逸る気持ちで次の写真を見る、、、とそれは、、、!!

 


そこから先は今まで見たことのない彼女の一面だった

事後なのだろうか、、、と妄想させるに十分なエロチックで生々しい裸体の数々

オシリストでもあるマサハルが好きな角度の写真もあり、露出度は高いものの決して下品ではない
まるでミロのヴィーナスのような亜美の姿にドキドキするのを抑えられなくなったマサハルは思わず開いていたノートパソコンを折りたたんでしまったほどだ

亜美の思わぬサプライズ(?)に驚きつつもどうして今、、、これを?

という謎が脳裏に浮かぶマサハル


しばらく困惑していたもののそういえば以前、彼女がこう言った事があった

「私のことも何か書いて欲しい」

マサハルが書いていた官能小説の一番の読者でもある亜美

(もしかして、、、そういうことなのか?)

彼女とはまだリアルに会ったわけではないし、正直、彼女をイメージして何かを書くにはまだまだ情報も何もかも足りなかった

どんなキスが好きなのか
どんなところを触れると感じるのか
感じるとどんな声を出すのか
そしてどんな風に男のモノを愛してくれるのか

 

まだまだ知りたい事は山ほどある

あるが、、妄想の導火線に火をつけるには十分だ

少なくともスタートラインには立てそうだった

 

そうしてマサハルの脳内で
亜美という人物が膨らみ始めた

 

 

 

 

 

 


(つづく)

 

 

 

 

 

 

忍び逢い~5~

亜美の気持ちに変化が起きたのは最近になってであった

それまでは「彼氏」という代えがたい存在、、、
特に家庭に問題があったわけではないが性に対して淡泊過ぎる夫に対しては不満がありコミュニティサイトを介して出会った「彼氏」は
亜美のそういった不満を打ち消す以上に心も身体も満たしてくれる特別な存在となっていた

(身体の相性がこんなにも合う人がいるなんて、、、)

「彼氏」との逢瀬は週1~2度に及び
会うたびに亜美の身体を貫いたまま何時間でもセックスをし続けるタフな彼氏に対し文字通り「無我夢中」となっていた

が、そんな二人の蜜月もある時突然、揺らぐことになった

それは独身と思われた彼氏に「事実婚」の妻が居た事

勿論、既婚者である亜美にとってそれを非難する筋合いはないのかもしれない
だけど彼氏からそういった事を隠されていたという事実
たとえそれが「事実婚」であったとしても後味が悪いのは正直な気持ちだった

それからも逢瀬を重ねる二人の関係性は変わらないように思えた

会えば以前と変わりなく互いを求め、時間の許す限り愛し合う、、、ただ、、、

亜美の心の中には彼氏のパートナーという存在が澱のように残っているようなそんな瞬間も時折訪れ
以前なら行為の後の腕枕にほんのひと時の幸せを感じた瞬間もあったはずなのに今は、どこか委ねきれない何かを感じたりしていた

ただ、この関係は決して成就するものではない、という事も理解はしていた
母親として子育てをし、仕事もこなす
そんな当たり前の毎日の中、それでも女としてまだまだ求められたい

元々、セックスには貪欲で、ココロだけでなく身体ごと求められたい
そんな亜美であったのだから今の夫との関係性は物足りないのは明らかである

以前は、無節操とまではいわないもののどこか刹那的に相手を探し、関係を結び、長続きしないまままた次へ、と
そんな行為を繰り返した事もある

だが今の彼氏は今までと違った
だからこそそれがたとえ成就できない相手であっても求め、求められたかった

そう、、、

彼女もまたマサハルと同じようにある種の現実逃避、そして癒しの時間を欲していたのである


がしかし、、、

彼氏との関係性が少しづつ変化しているような気がする今、亜美の心の中にも揺らぐものがあった

そんな中でマサハルがサイトに戻ってきたこと

これは何かのタイミングなんだろうか、、、

前に一度会おう、と思った時は本当に興味本位というか
あのような官能小説を書く人物がどういう人なのかという興味
自分の中で何となくイメージしている人とどれほどギャップがあるのかという興味

それが先行していたのでそれ以上の関係に、つまり成り行きでセックスをしてしまう
そんな事は想像もしていなかったし、そうなる事への抵抗感もあったのは事実

けれど今は自分の中に無意識のうちに作っていた壁が低くなったのだろうか

会う事に対し、そしてもしかしたら、雰囲気でそうなってしまうかもしれないことへの不安や抵抗感

それが薄まっている事に気付いていた

(今なら、、、会ってもいいかも)


ふいにそんな事が脳裏をよぎった亜美は思わぬ行動に走るのであった


(つづく)

 

 

 

 

忍び逢い~4~ 


(サイトをやめよう、、、)

行けなかったのは自分の責任であり、タイミングが悪かった、それだけのこと

がしかし、それほどまでにマサハルのココロは疲弊していたのだ

変わらない日々

仕事や実家の用事に振り回され気分転換すらままならない

振り回される、という表現が正しいのかはさておき

マサハル自身はそう思い込むことでどこか今の現状に納得するようにしていただけなのかもしれない

そんな中で、もしかしたら束の間の現実逃避、、、それと何かしら癒しになったのかもしれない

何よりもどんなカタチであれ「会ってみたい」と相手に思われること、必要とされること

それが四十を過ぎた男にとって自信になったのかもしれない、それなのに、、、


ただ、一方でこういったサイトでの交流に限界を感じていたのも事実

相手の事を知らないまま出会い、意気投合してリアルに会う

その時限りで終る事はほとんどなかったとはいえ、家庭を持つ立場ならやはりいつか終わりが来る、、、

今まではそれを理解しないまま、その時の感情に流されて行動していたものだが今はもうそれほど若くない

これが潮時じゃないか、、、そう考えるようになっていたそのタイミングでこれだ


(辞め時か、、、そうだな)

もう迷う事はない

気がつくと、退会のボタンをクリックしていたマサハル


勿論、亜美の事が気がかりだったのは否めないし、あんなに会ってみたいと思った相手である

出来る事なら会ってみたかった、というのは正直な気持ちだった

それを振り切るようにするにはやはりこの方法が正しいのだ


そうして変わらない現実世界にまた身を投じる事になったマサハル

仕事に追われ、ペットの世話をし、週末には掃除をし、今や趣味となった料理の腕を磨き

またいつもの朝を迎える


平凡な日々だが、不満はない

「誰もがそうであるようで、案外とそうではない人も多い

平凡であることが不幸せだと思うのがそもそもおかしいのだ」

、、、などとつぶやくSNSを眺めて退会したことに慣れようとしていたマサハル


それでもやっぱり何かが足りない

心のどこかに彼女の存在が引っかかっていた

そう、、、亜美という女性が


彼女に恋をしていたわけではない

そこまでまだ相手の事を知っていないのである

ただ、、、会ってみたいと思い、実際に会おうとしていた相手である

それが叶わないままピリオドを打った、それが心のどこかに魚の骨のように引っかかっているのかもしれない




そうして数か月ののち

相変わらず忙殺の日々の中、ある時ふいにサイトを覗いてみたくなったマサハル

気がつけば再入会のボタンをクリックしていた


(久しぶりってほどじゃないから、、、そんなに変わってないな、当たり前だけど)


今まで通り静かにサイトサーフィンをしても良かったのだが久しぶりにもう一歩前へ出てみようと思ったのか

「戻りました」

というつぶやきを載せてみる

反応は期待していないかった

ただ、気分を前向きに変えてみたかったのだ

すると、、、

意外な人から反応があった

「おかえりなさい」

その人は、、、亜美だった


あのキャンセル劇があって間もなくここを退会したマサハルは内心、もしかしたら彼女に嫌われて(好かれていたという意味ではないが)しまったのではないか

そう思っていたからである

なので正直、嬉しかった


その流れで彼女のページを見ると少し様子が違ったようなので近況を聞いてみる

どうやら噂の彼氏との間で色々あったようだ

今までのように日記で絡んだりと出来なくなったのは残念だが、それでもまたこうやってやりとりが再開できたのは楽しかった

(再開、、、からの再会、、、って親父ギャグか!)

とくだらないシャレが脳裏によぎるマサハル


ともあれ、今は慌てることはない

まだ仕事が落ち着かない状況で会おうなんて話は図々しすぎる


(いや、待て、、、こういう時だからこそ会った方がいいんじゃないか)


何故かふいにそう思ったマサハルだが前回と同じ轍を踏むわけにはいかない

ここは慎重にタイミングを伺わねば、、、





(つづく)







忍び逢い~3~ 

会って、お話をして、そして、、、

膝枕を貸し合う、、、

、、、貸し合う、というのも妙な表現だが要するに互いに一時の精神的な温もりを求めて、ということなんだろうか


このところ仕事に追われ、息をつく暇もないマサハルにとって、つかの間の現実逃避

何もかも忘れて誰かに身を委ねたい

かつてならば欲望のまま貪るように求めあう、そんな時間を欲したこともあったが、今はそこまでは求めていなかった

それは亜美の方もそうだろう

現に亜美が提案してきたのはビジネスホテルでの逢瀬

平日の昼間、文字通り「休憩」するだけの目的でホテルに入るというプラン

それを聞いたマサハルは同意しつつもやはり現実逃避という意味では少しくらい背徳的な会い方でも良いのではと内心思った

チェックインでのわずらわしさもあったが、久しぶりにラブホテルというあの淫靡な空間に行ってみたかったというのもある

下心がゼロだったというわけではない

何しろオトナの男と女である

二人っきりの誰も知らない空間、そして時間を共有する

本来なら話して盛り上がってそれでバイバイでも構わない

が魅力的な彼女を前に果たしてどこまで自制できるのか、、、

とはいえコロナ禍であり、どの瞬間でマスクを外すのか、それとも外さないのか

という問題もある

が、それでも雰囲気によってはもしかしてハグくらいはしてもいいかと思う可能性だってある

、、、かもしれない

そうなったら軽いキス、、、とか

(ああ、いかんいかん!)

またも妄想がマサハルの脳内を駆けめぐる

とりあえず落ち合う場所だ

インターチェンジからほど近いショッピングセンターは決まった

だったらそこからそれほど遠くない場所がいいだろう

何しろ時間はあるようで限られている

、、、と目に留まったのがすぐ近くにあるファッションホテル

(そういえばこんな所にあったな)

ネットで調べるとビジネスプランもあるようだ

(これならそんなに下心ありありには見えないだろう、、、って隠しているわけじゃないが)

そんな事を思いながらポチっと予約を入れてみた

(よしっと、、、)

亜美の方も最初こそ、話すだけならそういうホテルじゃなくとも、という思いがあったようだがゆったりとくつろげるなら、という事で承認してくれた


会うという日程が決まると何だかソワソワするというかワクワクするというか

それでもやっぱり初めて会うのだから緊張はする

(って今から緊張してどうすんだよ!)

はやる心を抑えきれないマサハル

がしかし

前日になって思わぬ事態が待っていた、、、




猫というものはある日突然、様子がおかしくなる、というのがよくある話だ

マサハルの愛猫も例外なく

前々日の夜、ひどい下痢をした愛猫の様子をみてただ事ではないと感じたマサハル

朝になってペット病院へ連れて行くがしばらく様子見が必要だという

点滴を打ってもらい下痢止めをしたのだが家で様子見する者も他におらず、このまま置いていくわけにはいかない

(今ならまだ間に合う、、、かもしれない)

予約を入れたホテルをキャンセルし、散々悩んだ挙句、亜美に連絡を入れ謝罪する


苦渋の決断ではあったがやむを得ない

がそれ以上に残念でならなかったのは会える事がそれほど楽しみだったからだ



断りを入れたのち、自分自身でも思った以上に落ち込むのを感じるマサハル


(きっともう、、、会ってくれないだろうな、、、、)


ある種の絶望感、今更ながら「遠くまで会いに行く」ことの難しさを痛感し、さらに落ち込んだ気分になる


今までならばあり得ないことだが、その勢いはマサハルを別の行動に駆り立ててしまった


(つづく)

忍び逢い~2~ 

そのコミュニティサイトはかつてマサハル自身も参加していた事もあった

そこでは「フォロワー」や「友達」というカテゴリーではなく「マイ〇〇」という(言ってみれば友達なのだが)形での繋がりだったが
個人的なメッセージのやりとりもしやすく
今でこそログインすることはなくなったが趣味や嗜好で繋がりやすいこともあってそこそこの出会いが楽しめたものだ

勿論、中には男と女の関係にまで発展した相手もいて、そういう意味では「出会い系」の走りだったのかもしれない

そんなコミュニティサイトの名前を久しぶりに目にしたマサハル

(なんだか懐かしいな、、、今もあったんだ)

甘酸っぱいような、それでいて切ないような、、、そんな想いを抱きながら久しぶりにログインしてみようと思い立ち
亜美のハンドルネームであろうその「名前」を検索してみることにした

何年振りだろう、、、ここで出会った幾人かの女性が頭に浮かぶ

東京まで会いに行った彼女

遠距離恋愛に発展した彼女

一度きりの快楽を共にした彼女

結局会えなかった彼女

etc etc、、、

今も元気だろうか
俺の事はもう覚えていないんだろうか
幸せになっているんだろうか

いや、今はそんなことはどうでもいい(どうでもよくないこともあるが)

思い出に浸りそうになるのを必死で振り払うとマサハルはその「名前」を打ち込んでみた


すると、、、目に入ったのは後ろ姿の髪型

今のコミュニティサイトでたまに自撮りした色っぽい姿をアップした亜美ではあるがそれらは部分的であり
妄想を掻き立てるには程よいものであったが、後ろ姿とはいえ今までになくリアルな写真

そしてもう一枚

ハロウィーンの仮装だろうか、仮面舞踏会でつけるようなマスクの写真も、、、

官能的な肉厚の唇
そして見つめられたらドキドキしちゃいそうな大きな瞳、、、

セクシーな亜美の実像(?)に触れ、背徳感に襲われそうになるマサハル

それまではどんな女性かわからず(何しろアバターは裸同然といってもいいくらいでコーディネートしてあげたいと何度思ったことか)
ぼんやりとしたイメージしか抱いていなかったのである、それが、、、

正直いって想像よりもキュートな印象に何故だか心臓の高鳴りが止まらなかった

その他の情報はまるでないというのに、、、

もっと彼女の事を知りたい、もっと亜美の事を知ってみたい

ここはもっと開けた場所だったはずなのにこれ以外の事がわからないだなんて、、、ああっ


だが、あそこではない、ここで少なからずだが彼女との繋がりを持てたこと

それだけで気のせいか距離感が縮まったような、そんな錯覚さえ覚えたマサハル

何よりも気軽にメッセージのやりとりが出来そうな事が楽しい

そう、、、亜美とのやりとりは何だか些細なことでも楽しいのだ

勿論、既婚者の彼女であはるが亜美には彼氏がいてその彼氏とは相思相愛
たとえ一時的でも誰かが入るような隙などないし、マサハル自身もそれは理解していたし今はそれを望むところではない

ただ、、、何故か惹かれるものはあったのだろう
亜美にとっては話し相手の一人でしかないだろうし、事実、小説を書く作家としてのマサハルには興味があるらしいが男性としてのマサハル自身に対してはそれほど興味がなさそうというか、、、まぁそれも致し方ない

とはいえ個人的なやりとりを交わすのは元々好きだし(ある意味、スケベなんだろう、と自負している)少なからず心を開いて話をしてくれる亜美に対しマサハルもココロを許す部分はあった

その過程でマサハル自身も数年前に味わった例の恋愛話について懺悔というか、ようやく小説としてカタチにする決心までしたほどである

それに対して唯一の読者として読んでくれた亜美

(、、、会ってみたい、何がどうってわけじゃないがリアルな彼女に会ってみたい)

次第にそう思うようになったのは自然な流れなのかもしれない、だが

目的もなく会いたいと思った事はおうとしたことはなかったマサハル

それでももしタイミングが合えば会ってみたい

亜美の屈託のない笑顔を見て、叶うならば膝をお借りしたい

そんな事を思い描きながらダメもとで打診してみた

すると、、、彼女の方からも会ってもいい、と

膝くらいならどうぞ、という事と「前に付き合った女性が”愛猫が求めてやまないマサハル膝”に顔をスリスリして喜んだ?」的なエピソードを聞いて噂の膝枕に興味を抱いた事もあり、話をしてみたいとの事であった

(以心伝心?いや、エロは抜きだし話すだけだ、何より興味本位もあるのだろう、色めき立つのは早いぞマサハル)

握り拳で思わず膝を叩いて自制するマサハル

互いに多忙なタイミングではあったが何とか日程を擦り合わせて会おうという話にまでトントン拍子で進んだ、、、、のだが



(つづく)